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2019年7月

2019年7月15日 (月)

3人の息子と10人の「里子」を育てた姉の記録

『朝日新聞』

養護施設の子に家庭のぬくもり  

長野の牧師 長田さん夫妻 教会で「里子」と越年20
(『朝日新聞』長野県版 20061229日付)

「どうしてこの家に来ると、安心するんだろう」。3年前から訪れる小学6年のヒロシ(仮名)が畳の上に寝転がりながらつぶやく。長野市の牧師・長田秀夫さん(66)と礼子さん(65)夫婦は、教会で約20年前から「一時里親」として「里子」とともに年を越す。この冬も29日、ヒロシが来る。いつものように、礼子さん手作りのクッキーで迎える。(長谷川美怜)

  ヒロシは、長野市内の児童養護施設で生活している。お盆や年末年始は、帰宅できる児童は家族とともに過ごす。しかし、ヒロシのように何らかの事情で帰宅できない児童は、「一時里親」の家庭が預かる。「親類の子どもを預かるような気持ちです。特別なことはしません」。台所で一緒に料理を作ったりケーキを焼いたりする。

「3年前に比べると、背も伸びたし、ちょっと生意気になったわね」と、携帯電話に保存した写真を見ながら礼子さんが笑う。 礼子さんは、ヒロシが初めて自宅を訪れた3年前の夏に投げかけた質問が忘れられない。
「生まれてきて良かったと思う?」
言葉を失った。彼の背負ってきたものの大きさを感じた。でも、回を重ねるごとにリラックスしてきたのがわかった。施設に送る途中に、ヒロシは礼子さんに言った。「このうちに来るのは永遠だからね」

 夫婦は、ヒロシのような児童をこれまでに約10人見てきた。集団生活に慣れているせいか、片付けや掃除を積極的に行う子どもが多いという。それだけに、「できるだけ何もしないでのんびりしてもらうよう心がけている」という。
「やらないよりはやった方がましになるのかな、ということをできる範囲でやっているだけ」。だが、子どもたちの心に与える影響は大きい。子どもたちは「日がたつのが早い」、「もう2日も終わっちゃった」と訴えるという。

 長野市里親会の会長を務める秀夫さんは「今の親には、食事を与えないなど育児を放棄する人が増えている」と感じてならない。牧師をしていると、「身が凍えそうなほどつらい話も聞く」。世の中には様々な境遇の人がいる。「だからと言って、誰が幸せで誰が不幸かなんてわからない」。ヒロシにもあえて実親のことは聞かないし、その必要はないと感じている。
「物質的な豊かさで埋められない、家庭の『温かみ』や『安心』が、知らず知らずにでも、心に刻み込まれていたらうれしい」と秀夫さん。「その経験が、『人を信頼する』土台になるのではないでしょうか」

(写真説明:長田秀夫さん、礼子さん夫婦。礼子さん手作りのクッキーをヒロシが来るまでクリスマスツリーに飾っている=長野市で)

※実姉である長田礼子は2019年6月12日、77歳と364日の地上の生涯を終え天国に召されました。葬儀には、ヒロシ君ではありませんが、三兄弟の「里子」とその家族が参列してくださいました。生前の記録として掲載します。

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